待つ力
穏やかに、その人のペースで物事が進むのを待つ。介護する側が急ぐと、本人ができることまで奪ってしまうことがあります。
PERSON 03|高岡市
介護福祉士
小林 茜さん
社会福祉法人 高岡市身体障害者福祉会
特別養護老人ホーム 志貴野長生寮
Q. 介護や福祉の仕事に興味を持ったきっかけは?
祖父の姿をそばで見たことが、人を支える仕事を考える原点になりました。
祖父は生前、脳梗塞による片麻痺があり、体を思うように動かせない中でも、自分でできることに一生懸命取り組む姿をそばで見ていました。その経験から、祖父のように体が不自由な方の力になりたいと考えるようになりました。
高校3年生になっても進路を決めきれずにいたとき、柔道整復師の父から「手に職をつけたらいいよ。国家資格があれば、将来の支えになる」と助言を受けました。人と関われる仕事にもひかれ、介護福祉士の資格を取得できる専門学校へ進学。身近な人への思いと、将来につながる専門性の両方が、介護の道を選ぶ後押しになりました。
Q. どんな人が介護の仕事に向いていると思いますか?
先回りしてすべてを手伝うのではなく、本人ができることを大切にします。
穏やかに、その人のペースで物事が進むのを待つ。介護する側が急ぐと、本人ができることまで奪ってしまうことがあります。
認知症の方は、言葉だけで気持ちを伝えられるとは限りません。表情や動作を丁寧に見て、伝えたい瞬間を受け止めます。
年齢や性別に関係なく、人への思いやりと周囲への気配りを持つこと。小さな変化に気づく姿勢が、温かなケアにつながります。
自発性を尊重することは、認知症の方もそれ以外の方も同じです。言葉やなまりが分かりにくいときも、表情やしぐさから思いをくみ取り、伝わる瞬間を待ちます。介護する側が心にゆとりを持ち、急がずに待つことが何より大切だと感じています。その思いやりが「ありがとう」と返り、やがて介護の現場を支える循環になります。
Q. 大変だと感じる瞬間を、どう乗り越えていますか?
仕事をしていると悩むこともありますが、上司や同僚に聞いてもらえること、友人や家族に相談できることが大きな支えです。誰かに話すことで気持ちが軽くなり、もう一度前を向いて頑張ろうと思えます。一人で抱え込まず、言葉にして共有することを大切にしています。
周囲の経験や違う視点を借りることで、利用者さんへの接し方を見直せることもあります。相談は気持ちを整えるだけでなく、次のよりよいケアへ進むための方法でもあります。

OFF TIME
祖父から受け継いだ家庭菜園と、時間をかけた料理が休日の楽しみです。
畑仕事や、スパイスを使って時間をかけるカレー作りに夢中です。おいしく仕上がった瞬間が一番の幸せ。カフェや喫茶店でゆっくりコーヒーを味わう時間も、心を整えてくれます。
Q. 今後の目標を教えてください。
大きな目標を掲げるより、目の前の仕事を丁寧に積み重ねたいと思っています。忙しくなって焦ると、効率ばかりを優先し、入所者さん一人ひとりと関わる時間が少なくなりがちです。そんなときこそ、横に座ってゆっくり話を聞いたり、相手の立場に立って声をかけたりするよう心がけています。
介護はチームで行う仕事です。職員がそれぞれの専門性を発揮し、意見を交わし、必要なときは助け合う。担当の違いにかかわらず、すべての入所者さんへ最適なケアを届けることが役目です。日々の中に笑顔が増える、楽しい時間をつくり続けたいです。
